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その手には老人の手記があった。声の主は今まで、その手記を読んでいたようだ。
クラウドは瞬時に上半身を起こすと、「返せ!」と頭部の蛇を謎の男にけしかけた。
だが、蛇の牙は男の肌に届かなかった。声だけが聞こえた。
「……申し訳ない、君の本を読ませてもらった。この本によると、君の蛇は熱を探知するようだね。今仮面を取ってあげるから、動かないでくれ」
同時に、開錠音とともにクラウドの仮面が割れた。
まず男の手が見えた。二本の鉄針を持っていった。それで仮面の鍵を開けたようだ。
そして、クラウドは男の顔を見た。
黄色い眼をした銀髪の美男子だった。
「我が名はピエル。以後、お見知りおきを……」
直後、クラウドは疑問を抱く。
クラウドが男の眼を見ても、男は石にならないのだ。
ピエルという男もまた、あの老人のように盲目かと思ったが、立ち振る舞いからそれも違うようだ。
ピエルは愛おしそうに、クラウドの顔を見つめ、言った。
「……美しい、美しいよ、メドゥーサの眷属。君の名はなんだい?」
「……クラウド」
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