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その城に無数に存在する空間のなかで、最も広大で複雑、そして寒いのが、その地下水路だった。
ピエル、クラウド、レン、アスカがいるその一角は、水路と言うよりも水流を城の外部と行き来させるための内門がある場所で、〝外〟が存在しないためか、門は硬く閉ざされ、開いたところで虚空が広がっていた。
ドラゴンのフィロスは、その一角に氷のバリケートを作って、寝床にしていた。
しかし、フィロスが毒にやられ、呼吸を止めた瞬間から、周囲に存在する氷の柱が溶けはじめる。氷は霜ではなく汗のような水滴を垂らしていた。
レンとアスカから見て、十三歩のところにピエルとクラウドがいた。
クラウドが蛇のカーテンを広げた瞬間、アスカはレンに助言し、二人の兄妹は目を瞑った。
レンは、右腕と右脚を失った妹を抱え、地下水路を脳内に描いて脱出を企てた。
それを察したかのように、ピエルが言った。
「……逃げても無駄だ。私のほうが、この城の内部に詳しい。どこへ逃げても、必ず追いつめる」
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