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ピエルの足音が聞こえる。だが、目を開けることは叶わない。
「レン、アスカ。眼を開けるがいい。クラウドには一時的に目隠しをしてもらった」
アスカが先に目を開け、続けてレンが開けた。クラウドは二匹の蛇を目もとに這わせ、宣言通り目隠しをしている。
「なあ、美しく不躾な兄妹よ、最後のゲームをしよう」
続けて、ピエルは暗い天井を仰いだ。
「幽閉棟の、開かずの扉。あの扉は、この城にいる者が〝男女二人だけになったとき〟に開く」
レンとアスカは顔を見合わせた。ピエルは続けた。
「……見たことがあるのだよ。私は、あの扉が開くところを。と言っても、そのときは城に無数の種族がいたが」
クラウドも、初めて聞くピエルの告白だった。
「……どういうことだ?」とレンが訊いた。
ピエルはどこか悲しげな瞳で言った。
「過去、一組だけあの扉を潜った男女がいた。一人は君達と同じ人間族の青年だった。絵を描くことを得意とし、宴には参加しなかった。他種族から見ても変わり者だったが、他種族がみても見事な絵を描く奇人だった」
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