灰色の魔女と伝説を穿つ少女

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その衝撃で、魔女は時間にして十数秒、気を失った。 気が付いても、クラウドには、一体何が起きたのかわからなかった。 確かに言えることは、アスカの身体から猛烈な勢いで何かが〝生え〟、それにいち早く気付いた数匹の蛇が、その身をタイヤのように膨張させ、さらに後ろ髪の蛇もその身を犠牲にして、クラウドの身体を守り、結果、クラウドは壁に打ち付けられたものの、かすり傷で済んだ。 そして、氷が無数に存在する冷たいこの空間では、蛇の特殊能力によって、体温を持つ少女を探し当てることは容易だった。 だが、アスカは、先ほどの位置から僅かに下がっているだけで、クラウドの視界にいた。 アスカは逃げも隠れもしないで、相変わらず目を瞑り、クラウドに言った。 「……天国か地獄か。そんなものは知らない。あるのかもわからない。けど、あなたの話を聞いて、こう思った。 ここは冥界かもしれない、って。死んだ人が逝きつく場所、地獄と天国と〝あるいは〟の入り口」 ……魔女は信じられぬ光景を目撃した。 脚を失ったはずの少女が……立っているのだ。 脚が生えている。本来の少女の肌とやや色が違う。白い。まるで白馬の足の色のようだが、そのかたちは少女の脚だった。  
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