灰色の魔女と伝説を穿つ少女

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アスカは冷たい涙を流して、静かに言った。 「……確実に、石に変えたい。それはお互い一緒でしょう?」 「あっ、あっ、あっ」と言って、魔女の足が石になっていく。 アスカは、顔面の窪みからふたつの氷を取り出し、暴れる蛇を振り払うと、クラウドに言った。 「……さっきの続き。あなたの世界には天国と地獄しかなかったの? 生まれ変わればいい……って言いたかったんだけど……もう無理ね」 クラウドは仰向けに倒れ、首から下を石にしていた。 アスカは屈み、魔女の耳に囁いた。 「……憂いを抱えた悲しい人。言い残すことはある?」 クラウドは懇願するように、消え入りそうな声で言った。 「どうか、ピエルを……彼は私よりもかわいそうなひと。だから、アスカ、貴女がピエルを導いて、お願い。あの人を元の世界に……」 アスカは何も言わなかった。 「待って、待って、どうか、あ。どうかぁぁあ……」 石になっていくクラウドを置き去りにして、妹は兄と吸血鬼の下に向かった。 ……次第に、アスカの視界に光が差す。 「……ありがとう。眼もくれると思った」 と言って、アスカは残酷に微笑み、自分の腹をさすった。  
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