吸血鬼社会

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特に武器を持たない二人だが、レンは身体中に鋭い傷を創り、肉弾戦は一方的だった。 レンは螺旋階段に敷物のように倒れ、階段の一部に紫色の血溜まりを作っていた。 ピエルの声が螺旋階段に響く。 「……守れないぞ。そんなものでは。大切なものも……」 ピエルの脳裏に、故郷が蘇る──。 ──とある世界のフランスという国では娼婦業が蔓延し、問題視したルイ9世という国王がその職の根絶を謳う。 だが、一方的な抑圧は数多の問題を生み、結局は後のナポリ女王が娼婦の管理を計った。 娼婦専用の特区を用意し、そこでは政府が娼婦の健康や素行を管理し、彼女達の稼ぎの一部を徴収した。 本題の、ピエルが住む世界において、他者の血を欲するその欲求は〝病〟だった。 その世界のとある国では毎年30万人の子が産まれる。 同時に、決まってその新生児のなかに、100分の1ほどの確率で病を持つ子が生まれた。 その病を発症した子は、あらゆる食物にアレルギーを持ち、唯一摂取できたのは哺乳動物の血液だった。  
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