吸血鬼社会

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食、性、睡眠の三大欲求の起伏が人間より激しく、なかでも空腹時には、理性を失うほどの凶暴さを共通して見せた。 代わりに知能指数が高く、従来の人間よりも発達した筋肉質を保有し、さらには不老長寿だった。 だが、それらはその世界における問題を助長させた。 その世界は海が多く、大地が少なかった。 科学は発達し、新種の食糧から長命の新薬が開発された。 死を遠ざけた社会は、人間の数を激増させた。 その副作用か、血を求む患者が生まれた。 彼らは総じて患者と呼ばれた。それはその国においてネガティブな名称だった。 彼らを解剖研究した学者もいた。病の原因は新薬による副作用とわかったが、予防する新薬の開発は不可能だった。 歴史の節々では、差別する事件や、根絶しようとする動きもあったが、結果として、国々の政府は彼らの管理を計った。 だが人間と吸血病を持つ者達の共存は何かとうまくいかず、結局のところ専用の特区をつくることになった。  
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