吸血鬼社会

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先にも述べたように、その世界は人口が多く、土地を有効活用するため、建築学も発達していた。 政府は専用の巨大な摩天楼を海上に建設し、無機質で巨大な箱のなかに吸血病を持つ患者を隔離した。 摩天楼内は楽園だ。 患者には朝昼晩、決まって豪勢なスープが支給され、摩天楼内は居住区と、学業をする区画、そして仕事をするための区画が用意されている。 人間と同じように仕事を与えられ、その賢い頭脳を生かした様々な事象の研究が主。 もちろん経済観念も存在し、仕事によって給料も支払われる。 娯楽施設もあり、そとの世界と何ら変わらぬ生活が出来るようになっている。 ……以上が、政府が謳った摩天楼の紹介だった。 患者を産んでしまった親は、後ろめたい気持ちを緩和させて、患者となった子を摩天楼に送った。 実際は、楽園とほど遠い強制労働施設だった。 学においては、外の世界に関することと歴史に関することが制限され、人間社会の情報は統制されていた。  
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