吸血鬼社会

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他の患者よりも理性に優れ、普段は本を読むことを好んだ。 ほとんどがその世界ですたれたファンタジーで、加えて生物の図鑑を読むことが多かった。 総じて、大人しく賢い青年だった。   しかし、血液の調達を繰り返したため、彼はとうとう政府に捕まり、摩天楼に収容されてしまう。 海底のエネルギー発掘を目的とした海上施設。 居住区はガランと広く、皆が雑魚寝した不潔な空間で、患者達に与えられるのは番号と粗末なボロだけだった。 寿命を縮める不味いスープを飲まされ、睡眠時間を削って重労働を強いられた。 だが、最も大きな問題は、収容された患者達の心は家畜と化し、すべての虐待が当たり前と化していることだった。 青年はその環境が間違っていること、を知っていた。 だが、摩天楼の警備体制は厳重で、いくら人間よりも優秀な力を持っていても、個人がその体制を覆そうとするのは不可能だった。 年月にして数年、青年はおとなしく摩天楼で過ごした。 ボロを纏い、労働をすればするほど、筋肉が痩せ細る負の環境だった。  
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