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悠久の時間かもしれないし、十数年かもしれない。
いつしかピエルは死に場所を求めていた。
厳密には、その心臓は鼓動を失っていたが、それでも心を持った彼は、自身が滅っする時と場所を自分で選ぶことを望んだ。
墓選びこそが、永き寿命を得た彼がいきついた究極の幸福だった。
時の感覚を失った頃、城に二人の兄妹が迷い込んだ。
その二人の姿を見たとき、ピエルは震えた。
兄妹の姿は……愛した女の生き映しだったのだ。
一抹の愛を抱き、ピエルは兄妹を導く。
やがて兄のほうと避けられぬゲームを行った。
見れば見るほど愛おしい顔をしていた。性別すらも超えた愛おしさだった。
果てる場所はもういい。
ピエルは何も告げずに、愛した人の子に殺されることを望んだ。
──吸血鬼の顔は安らかだった。
その身は石膏のように硬く、無機質になり、すべての体液は石のように固まった。
周囲にはいつの間にか蠅が飛び交い、いくつかはピエルの透明な頬で手をすり合わせている。
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