幻想の城の宴

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暗い回廊には、ぽつぽつと火が灯っていた。 見ると、翼の生えた悪魔の舌の上で青い灯火が燃えている。 アスカはレンの背中を抱き、レンはアスカの心臓の鼓動を感じては、瞬間瞬間、生を確認した。 空腹のレンは歩を進め、食の匂いを辿った。 やがて、向こうのほうから音が聞こえた。 弦楽器が奏でるジャズに聞こえるが、聞いたことのないメロディで、どこか女の悲鳴を思わせた。 音と匂いに導かれ、レンは突き当りの扉の前に立った。 両開きの扉は打ち合わせ部分が牙によるジッパーのようになっていた。 隙間が開いている。レンとアスカは扉の隙間に大きな目を近づけ、扉の向こうを覗いた。 ──そこには、信じられない光景が広がっていた。 数えきれないほど多くの生き物がいるが、すべてが、見たことのない異形の形をしている。  
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