灰色の魔女

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罪を背負う力には副作用があった。 他者の罪や悪心を吸収することによって、彼の心は、その悪に蝕まれていたのだ。 亡国の王子は、途方もない悪を背負い、自分を葬るための旅を始めた。 同時に、彼は人生の命題ともいうべき疑問を抱えていた。 『憎しみを秘めたまま  死んだ善人は  天国に行けるのだろうか?』 他者を救っても、状況も自分も報われぬ連続が、青年の心にそんな疑問を宿した。 その憂い溢れる疑問に答えをくれる者はいるだろうか? ……いやいない。 彼は、残り僅かな善良な心が指し示す通り、自らを地獄と呼ばれる島に送ることにした。 だが、そこで彼は、命題に答えてくれる女性と出会う。 ヴーロートは、爆発してしまいそうな力の最後に、恩人の悪を背負うことにした。 そして罪を背負い過ぎた彼に異変が起きる。亡国の王子は、ぼこぼこと体を隆起させて、鬼と化した。 「ぼぁあああああ」と、赤子のように鳴く鬼だ。鬼が鳴くたびに、マグマが爆ぜた。 ヴーロートはその島で鬼となり、嘆きと餓えを抱える悲しき存在となって彷徨うことになる──。  
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