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「まあ十分半殺しじゃすまないけど」
「え?」
健吾さんが怒りに震えている。
「怖かったろ、髪」
「あ」
思わず髪に手をやると、あったはずの長さがなくなっていて寂しくなる。それ以上にあの時の五十嵐さん形相が恐ろしかった事を思い出して涙が止まらなくなった。健吾さんが私の背中を撫でる。
「美弥子の髪、守れなくてごめんな」
子どもみたいに泣きじゃくって言葉が出てこなかった。あの時麻衣子さんがもう少し遅かったら、もっと酷い事が起きてたかもしれないから、髪くらいどうって事ないはずなんだけど、健吾さんが気に入っていたものを無くした事が悔しかった。
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