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「透吾さん、それ、優衣ちゃんにまったく伝わってないです。今から優衣ちゃん呼ぶんで、話してあげてほしいんですけど」
透吾さんがポカンとした顔をした。なんとなく、パグみたいな顔で、透吾さんらしくなくて、一瞬笑いそうになるのをこらえながら、私は携帯電話を出した。
優衣ちゃんは何にも言わないのに、びっくりするほど早く家に来てくれた。
「美弥子のマンション行ってみたかったから。……。え?」
演出するつもりはなかったんだけど、優衣ちゃんに、透吾さんが、ここに来ている事はいってなかった。
優衣ちゃんの透吾さんを見つめる眼差しが、潤んでる。
こんな瞳で、見られても、男の人って、自分に堕ちてしまってるってわからないもんなんですかね?
優衣ちゃんの睫毛の長さまで変わってしまいそうな視線。
透吾さんはパグではなくなった顔で、優衣ちゃんを見てる。
恋って、誰にでも起きかねる厳かな一瞬なのかな? そんな事思いながら二人を見ていた。
「透吾、どうしてここに? 今日、夜会おうって言ってたのに」
「え、あ、糠漬けが……」
透吾さん、糠漬け優先させたなんて今は言わないで!!
「優衣ちゃん、あの、思い切って自分の気持ちとか、言ってもいい感じだから、言ってみて欲しいの」
私に言えることがあるとしたら、これだけだったと思うの。
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