親族対面

19/32
前へ
/32ページ
次へ
「透吾さん、それ、優衣ちゃんにまったく伝わってないです。今から優衣ちゃん呼ぶんで、話してあげてほしいんですけど」 透吾さんがポカンとした顔をした。なんとなく、パグみたいな顔で、透吾さんらしくなくて、一瞬笑いそうになるのをこらえながら、私は携帯電話を出した。 優衣ちゃんは何にも言わないのに、びっくりするほど早く家に来てくれた。 「美弥子のマンション行ってみたかったから。……。え?」 演出するつもりはなかったんだけど、優衣ちゃんに、透吾さんが、ここに来ている事はいってなかった。 優衣ちゃんの透吾さんを見つめる眼差しが、潤んでる。 こんな瞳で、見られても、男の人って、自分に堕ちてしまってるってわからないもんなんですかね? 優衣ちゃんの睫毛の長さまで変わってしまいそうな視線。 透吾さんはパグではなくなった顔で、優衣ちゃんを見てる。 恋って、誰にでも起きかねる厳かな一瞬なのかな? そんな事思いながら二人を見ていた。 「透吾、どうしてここに? 今日、夜会おうって言ってたのに」 「え、あ、糠漬けが……」 透吾さん、糠漬け優先させたなんて今は言わないで!! 「優衣ちゃん、あの、思い切って自分の気持ちとか、言ってもいい感じだから、言ってみて欲しいの」 私に言えることがあるとしたら、これだけだったと思うの。 .
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

565人が本棚に入れています
本棚に追加