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「……泉」
大姫は泉の名前を呟くと、ゆっくりと起き上がった。そうして、
「泉、今何刻(なんこく)?」
と、泉に尋ねて来た。
「あと一刻(だいたい二時間)で、お昼ですよ」
「もう、そんな時間なの?」
泉が開けた戸から差し込む光は明るく、昨日の夕刻からこんな時間帯まで眠っていたとは、さすがに自分で自分が情けなくなるのか、大姫は少し情けなさそうな顔になった。
「起こしてくれれば良かったのに」
「昨日、姫様をお連れになった頼家様が、『姉上はお疲れのようだ』と言ってらっしゃったので。それに、体が休みたがっている時は、休まれたらいいのですよ。その分、明日早く起きられたらいいじゃないですか」
だから泉は、ふわっとした笑顔を浮かべるとそう言った。
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