1 萌黄(もえぎ)

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 切り立った石の壁を通り抜けると、視界が開けた。  それは、まるで閉じていた空が急に割れて、一気に広がったように思えた。 「お父(とう)、あれが海?」  泉(いずみ)は、馬を連れて自分の前を行く父に問うた。  泉の視線の先には、薄い青の色が広がっている。  真上の空の色は、群青。  暖かい、春の日だ。 「いや」  父は、泉の方をちらっと見て再び前を向くと、首を小さく振った。 「ここからは、海はまだ見えん。あれは、空の色だろう」 「ありゃ、かわいか娘さんじゃねえ」 31b8cbce-dfcf-4317-aa94-d12604cb997e
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