1 萌黄(もえぎ)

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 それを見て、父は黙って、その枇杷を手の平で受け取った。  ぶひひと、短くアオが鳴く。 「アオ……本当にお前は、泉には甘いな」  ため息を吐いて、父はそう言った。 「泉、お前がこれから仕える場所は、色んな方々が出入りする。お前はたくさんのことを見聞きするだろう。だがその中には、他言せぬようなことがあるやもしれぬ。先のようにお前が軽い気持ちで話したことが、取り返しのつかないことになることだって、あるかもしれぬのだぞ」 「お父……」 「お前を鎌倉にやるのは、できれば避けたがったが……」  枇杷をかじりながら、父は泉を見た。 「せっかくもらったんだ。お前も食べるがよい」 「あ、はい」  泉は父の言葉に頷いて、泉も枇杷を口元に運んだ。
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