276人が本棚に入れています
本棚に追加
それを見て、父は黙って、その枇杷を手の平で受け取った。
ぶひひと、短くアオが鳴く。
「アオ……本当にお前は、泉には甘いな」
ため息を吐いて、父はそう言った。
「泉、お前がこれから仕える場所は、色んな方々が出入りする。お前はたくさんのことを見聞きするだろう。だがその中には、他言せぬようなことがあるやもしれぬ。先のようにお前が軽い気持ちで話したことが、取り返しのつかないことになることだって、あるかもしれぬのだぞ」
「お父……」
「お前を鎌倉にやるのは、できれば避けたがったが……」
枇杷をかじりながら、父は泉を見た。
「せっかくもらったんだ。お前も食べるがよい」
「あ、はい」
泉は父の言葉に頷いて、泉も枇杷を口元に運んだ。
最初のコメントを投稿しよう!