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「お幸せだったのですね」
そうして目を開けながら、泰時は呟いた。
そう。
たとえ短くても。
残された日々を、あの二人は幸せに生きたのだ。
「ええ……泉も、そう申しておりました。私は、幸せだったと」
小太郎の言葉を聞いて、伯母は涙を一筋流した。
そして目を開けて、小太郎が抱く赤子に手を伸ばした。
「泉の願い、しかと受け取りました」
そして、赤子を受け取りながら、言った。
「どうかよろしくお願いします」
小太郎は、そんな政子に頭を下げる。
「それから、泰時殿にお願いがあるのですが」
小太郎は、泰時の方に向き直って言った。
「何でしょうか?」
「あの子の二つ名を、どうか付けてやってください。それが、泉の願いでした」
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