■カレー作り

71/71
183人が本棚に入れています
本棚に追加
/1318ページ
チラリと後ろを見ると、 相瀬さんも利一に向かって すがる様な視線を送っている。 利一が食べなければ 彼女にお鉢が回ってくるからだ。 これ以上 増やされては堪らないのだろう。 ココで姫野さんが再度聞いてきた。 「キイチくん、もう一回聞くわね。 まだお腹に余裕、ある?」 利一は頬杖をつきながら、顔をしかめる。 「あぁ、たっぷりあるよ」 本音を言うと、カレーなど見たくも無い程 お腹がいっぱいだったが もはや他に選択肢は無い。 利一がぶっきら棒に言うや否や 姫野さんは 皿にカレーライスを盛り付けてきた。 「はい、 お二人で御ゆっくりと召し上がれ」 姫野さんは笑顔で不愉快な言葉を残すと、 鍋と飯ごうを運んでいった。 流し台で洗うためだろう。 利一は仕方なくカレーを口に運ぶ。 …ルーの塊があるし、すっげえ冷めてる。 カレーを咀嚼している所で 相瀬さんと目が合う。 彼女は白く細い指で カレーの入った皿を指差した。 「…お揃いだね…」 「やかましい!」 こうしてカレー崩しをする人間が また一人増えてしまったのであった。
/1318ページ

最初のコメントを投稿しよう!