■鍾乳洞

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利一と相瀬さんもそれに従い、 出口に向かう。 バスから出ると、 気持ちの良い風を全身に浴びる事が出来た。 相瀬さんのサラサラした ショートヘアーの髪が揺れる。 その無口チビがこちらを振り返った。 「…姫ちゃん…どこかな…」 「そうだな、 一番喧しい所に行けば見つかると思うよ」 「…それ…姫ちゃんに…言って良い…?」 「止めてくれ、殺されちまう」 相瀬さんは一瞬だけクスッと笑った。 その後、二人は人と人の間を縫う様に歩き 駅前にある噴水の辺りで 姫野さんと梅坂を見つける事が出来た。 …途中でロリ子に遭遇してしまい、 動物園に行く自慢を聞かされたので 結構時間が掛かった。 姫野さんはこちらに気づく。 「二人が来るまで何でか クシャミが止まらなかったんだけど、 あたしの悪口とか言ってなかったかしら?」 お姫様の勘は シャレにならないくらい鋭い。 「あ~、どっかで話してくれた “白馬の王子様”が 姫野さんの噂でもしてんじゃないのか?」 「あら~、それなら良いわぁ」 姫野さんは手のひらを頬に付け “恋する乙女”の顔になった。 何とか危機を脱しれたようだ。 利一はホッと胸を撫で下ろした。 …相瀬さんの辺りから生暖かい視線を感じる。
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