186人が本棚に入れています
本棚に追加
利一と相瀬さんもそれに従い、
出口に向かう。
バスから出ると、
気持ちの良い風を全身に浴びる事が出来た。
相瀬さんのサラサラした
ショートヘアーの髪が揺れる。
その無口チビがこちらを振り返った。
「…姫ちゃん…どこかな…」
「そうだな、
一番喧しい所に行けば見つかると思うよ」
「…それ…姫ちゃんに…言って良い…?」
「止めてくれ、殺されちまう」
相瀬さんは一瞬だけクスッと笑った。
その後、二人は人と人の間を縫う様に歩き
駅前にある噴水の辺りで
姫野さんと梅坂を見つける事が出来た。
…途中でロリ子に遭遇してしまい、
動物園に行く自慢を聞かされたので
結構時間が掛かった。
姫野さんはこちらに気づく。
「二人が来るまで何でか
クシャミが止まらなかったんだけど、
あたしの悪口とか言ってなかったかしら?」
お姫様の勘は
シャレにならないくらい鋭い。
「あ~、どっかで話してくれた
“白馬の王子様”が
姫野さんの噂でもしてんじゃないのか?」
「あら~、それなら良いわぁ」
姫野さんは手のひらを頬に付け
“恋する乙女”の顔になった。
何とか危機を脱しれたようだ。
利一はホッと胸を撫で下ろした。
…相瀬さんの辺りから生暖かい視線を感じる。
最初のコメントを投稿しよう!