2、事実は小説よりも奇なり

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「は、はい!」   その瞬間、会議室内の大半が笑い声を上げた。 一体何故皆が笑っているのかわからず、きょとんと周りを見渡すと、隣に座る西浦さんが理由を教えてくれた。 「あんまりにも瑠璃さんがボーっとしているか。そんなに驚いた? 自分の意見が丸飲みにされて」 「……はい。 正直何が起こったのか全く理解できませんでした」 「たとえばもうびっくりするくらいの大御所とかが勢ぞろいとかだったら厳しいけど」 「そう言うもんなんですか?」 「そう言うもんなんです。 で? ちゃんと宿題きいてたかしら?」 「宿題?」 「完全に呆けてたわね……」 「申し訳ありません……」   ありえない。 驚きのあまり完全に話を聞いてなくて伊藤さんの質問に宿題ってなんですか状態の私は、思わず俯いてしまった。 社会人として何をやってるんだか……。 これじゃあ授業中に漫画読んでる学生と一緒だよ……。   落ち込む私の耳にまた聞こえる笑い声。 制作会議で人がこんなに笑う事なんて今まであっただろうか? 顔を上げると監督の後ろのホワイトボードが視界に入った。 そこにはキャラデザの文字。 私は自分の手元にそれがある事を思い出した。 「そうそう、それ。そこから決めてきてくれる?」   笑いをかみ殺しながら、監督はにっこりと笑った。 「はい。もしかしてこれも私の独断だったりしますか?」 さっきの流れを思い出し思わず聞いた一言。 もしも私の独断で、またこれも決まってしまうのなら責任重大だ。 そんな不安から声が少し小さくなる。
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