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ただやりたい事をやっていた学生時代。
社会人になってもあまり変わらないつもりでいたのに、いつの間にか私は素直になる事が怖かった。
そう気が付いた時には、修正できない程、私自身は可愛くなくなっていた。
いつもと変わらない朝。
今日はまるで絵の具で塗りつぶした様な真っ青な空とはこの事を言うんだろうなと思うほどの良い天気。
七月に入って梅雨は明け、夏らしく強くなる日差しを避ける様に休日明け、職場へと向かった。
「おはようございます」
「おはよ。パソコン凄い事になってるぞ」
言われて自分の席へと向うと、パソコンのモニターの枠部分には、所狭しと張られた付箋。
「なんじゃこれ」
「お愁傷様」
この様子を知らせてくれた同僚は、面白そうに笑いながら後ろから覗きこんでくる。
いつの間にか、誰が言い出した訳でもなく始まったこの行為。
重要なものは赤色、至急連絡が欲しいものは黄色、そして報告は緑色。
一つ一つを確認しながら仕事を進めて、午前中にやっと綺麗なモニターに戻った。
「結城(ゆうき)さん、ロビーにお客様がお待ちです」
「お客様?」
はい。と返事をしながら自分の後ろにかけられたホワイトボードを確認するも、来客の予定なんてものはなかった。
「三咲(みさき)様とおっしゃる方です」
「三咲!?」
私は聞き覚えのある名前に驚き、慌ててロビーへと走り出した。
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