2、事実は小説よりも奇なり

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 学生時代、小説を書く友人の勧めで始めた書き物。  遊びのつもりだった。でもいつの間にか、書く事自体が当たり前になり、就職してからもそれは続いた。  個人のホームページを作り、趣味として掲載していた。 もちろん書くからには仕事募集の話題も上げていた。 そしてそんな時、一通のメールが届いた。 【よろしければ詳しくお話できませんか?】と。 相手はゲーム会社から請負としてシナリオを書いている、フリーのクリエーターさんだった。物は試しだと話を受け、委託契約を結んだ。 それが二年前の事だった。   仕事は二ヶ月に一度程の締め切りで、本職との両立も特に問題はなかった。 東京に打ち合わせで出る必要もなく、ただ送られてくる条件に合ったものを書く。 その繰り返し。 物語を書くのが好きだった私にとっては、名前は会社名で自分の名前が表に出るわけではなかったが、それでもよかった。 自分が書いた物が世に出るそれだけで満足だったから。   そして運命の日。 私が担当したゲームが人気となり、新しく始まるアニメの原作依頼の話が来た。 その連絡を受けてもなかなか信じる事が出来なかった。 だって私は委託契約を結んでいるだけだったから。 本来なら表に名前の出る人間じゃない。 それでも先方のゲーム会社の人は、アニメ用のシナリオを是非書いて欲しいとわざわざ関西の端っこまでやって来た。 これを断る理由なんてなかった私は、二つ返事で話を受けた。 その直後、広告が打たれた。 【新アニメ制作決定! ゲーム原作担当 瑠璃(るり)   原作・脚本を担当】   慌ただしい生活はここから始まった。
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