こいのぼり

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「新、山の中だし、暗いよ」 40分ほど揺られて降りた地は、人がいない山の中。しん、と静まりかえっている 地図は頭に叩き込んだし、安全なことは知っている。そんな俺でも不安になってきた。貴子はもっと不安なんじゃないだろうか。 「大丈夫か?」 聞いてみるけど、小さく頷くだけ。俺の頭一個分。いや、一個半ぶん背の低い貴子の顔はあまり見えなかった 「ちょっ」 こんなにも静かになることなんて滅多にない。こんな山の中へ来るなんて予想もつかなかっただろう。 そっと貴子の右手を握った。 「こいのぼり、見に行くんだろ。そんなテンション下げんなよ。大丈夫だから」 不安そうにしているものの次はこっちを向いてしっかり頷いた。
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