序章

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桜に目を奪われていれば 「紅桜!何しとんや?はよ行くで。旦那はん待っとるよ」 「へぇ、おかあはん。今、行きます」 紅桜、と呼ばれた女は桜から目を離し歩き出す その姿に人々は釘付けになり 「はぁ、綺麗やなぁ…」 「こないなとこで紅桜太夫にお目にかかれるなんて」 「ええもん見たわ」 「桜よりも綺麗ちゃうか~」 そんな人々と目が合えば『ぺこり』と会釈をする 紅桜<ベニザクラ>------- 遊郭の中にある『月光<ゲッコウ>』で遊女をしており、知らぬ者が居ないほど名が知れた太夫である ある日フラッと現れて、あっという間に太夫まで上り詰めた遊女だ その美しい容姿も然ることながら芸事にも秀でていた おまけに性格まで良い、というおまけつき どんなお偉方が目通り願おうと紅桜が『嫌だ』と一言言えばその姿を見ることも不可能だった 今では全ての遊女の憧れであり、目標であった しかし、そんな憧れの的である紅桜、『月光』に来る以前までのことを知る者はいなかった・・・ 一部を除いて・・・・・・・・
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