649人が本棚に入れています
本棚に追加
/384ページ
桜に目を奪われていれば
「紅桜!何しとんや?はよ行くで。旦那はん待っとるよ」
「へぇ、おかあはん。今、行きます」
紅桜、と呼ばれた女は桜から目を離し歩き出す
その姿に人々は釘付けになり
「はぁ、綺麗やなぁ…」
「こないなとこで紅桜太夫にお目にかかれるなんて」
「ええもん見たわ」
「桜よりも綺麗ちゃうか~」
そんな人々と目が合えば『ぺこり』と会釈をする
紅桜<ベニザクラ>-------
遊郭の中にある『月光<ゲッコウ>』で遊女をしており、知らぬ者が居ないほど名が知れた太夫である
ある日フラッと現れて、あっという間に太夫まで上り詰めた遊女だ
その美しい容姿も然ることながら芸事にも秀でていた
おまけに性格まで良い、というおまけつき
どんなお偉方が目通り願おうと紅桜が『嫌だ』と一言言えばその姿を見ることも不可能だった
今では全ての遊女の憧れであり、目標であった
しかし、そんな憧れの的である紅桜、『月光』に来る以前までのことを知る者はいなかった・・・
一部を除いて・・・・・・・・
最初のコメントを投稿しよう!