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―――…
その後、平助は泉涌寺の塔頭戒光寺にその身を収める
藍は抜け殻のように感情を無くし―
『生きた屍』
藍はいつしかそう呼ばれるようになった
ただ―…女中の仕事をこなし、必要最低限の食事と睡眠を摂る
そんな日々を送った
だが―…
「平助…今年もまた桜が咲いたよ―」
桜の咲く季節になればその顔に感情が戻る
まるで桜の木が平助そのものであるように語りかける
儚げな笑みを浮かべ、桜に向かう藍は幸せそうで―…
誰も近づくことが出来なかった
「――ふふっ……懐かしいね。あの時も平助は―……」
藍が語りかければその度に風が吹き、花弁を散らしその身を包み込む
『寂しくないよ』
『僕は此処に居る』
『藍は一人じゃない』
まるで平助が答えるように―…
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