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「か…堪忍なぁ…おかあはん、命を粗末にする人嫌いやねん
そやけど…いきなりコレは…」
慌てふためく少女は手に持っていた桶に手ぬぐいを浸し藍の頬を冷やす
「……ほんまはえぇ人やねんで?」
困ったような笑みが平助を思い出させる
「っ……う―…」
突如泣き出した藍に少女がオロオロとしていれば
「…なんや、怒ったり泣いたり忙しいなぁ」
先程の女が膳を持って立っていた
「蒼<アオ>、あんたは仕事戻り」
蒼、と呼ばれた少女は一礼し、その場を後にした
―…ハァ
大きなため息に身体を揺らせば両の頬を掴まれ顔を上げさせられた
「……何があったんや、言うてみ?
あんたのココに詰まってるもん、全部吐き出し」
とん、と指差された胸元
キツい眼差しとは裏腹に優しい口調
見ず知らずの女だというのに、その醸し出す雰囲気に呑まれ藍は全てを曝け出した
―――…
「そうか……好いたお人に先立たれたんか…」
話し終え、涙が止まる頃には藍も落ち着いて
冷静になればなるほど先程の自分の醜態が恥ずかしくなる
「すんません…助けてもろたのにあんな暴言……
ほんまにありがとうございました」
「ええから、顔上げ
で、あんたはこれからどないするん」
ゆっくりと上げた瞳が揺れる
これから?
自分にこれからなどあるのだろうか
人様に迷惑をかけ、新撰組に戻るわけにも行かず
また、下を向いた
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