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風がふいた
北よりの風だ
わたしはマフラーに顔をうずめた
「こんな季節、なくなってしまえばいいのに」
隣で歩くふぅちゃんは言う
同意を求めるように見てわたしは
うん、と言ってわたしはうなずいた
「スカートはさぶい」とふぅちゃんが文句を言った
そう言ってもふぅちゃんのスカートは昨日と同じ長さだ
「でもわたし、雪は好きよ」
しんしん積もった雪は次の日にあっけなく溶けてしまった
窓から見ていただけだったことに少し後悔をした
ふぅちゃんは「矛盾だね、咲は」と言い笑った
口角がきゅっと上がる
わたしの好きな笑顔だ
耳たぶについているピアスが光る
前、ふぅちゃんに「ピアス、しようよ」と言われた時わたしは断った
「なんでー?」と残念がるふぅちゃんの形のいい耳たぶに次の日にはピアスがはまっていた
わたしが顔を歪めるとふぅちゃんは「かわいいでしょ」と笑った
はにかんだような照れ笑いだった
栗色の髪がかかる耳は少し赤くなっていた
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