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「・・・彩華。」
「・・・蒼空。」
自然と目と目が合い、お互いの顔も・・・引き寄せられていく。
「「――――。」」
二人の唇が・・・・優しく重なった。
言葉に出さなくても、体全体から伝わっていく・・・気持ち。
――――『愛してるよ、彩華。』
――――『愛してるわ、蒼空。』
お互いの気持ちが、重なり合ったそこから・・・・伝わっていく。
そんな二人のやりとりを、じっと見る視線があった。
「・・・・おー。オレがいる前でよくもまぁ、見せつけてくれるなぁ。」
ニタニタと嫌な笑みを浮かべる、司がそこにいた。
二人は我に返り、すぐ離れて顔を赤くした。
司もいる事を忘れて、二人だけの世界にトリップしていた事が・・・何だか恥ずかしい。
「オレはお邪魔みたいだし、そろそろ帰るよ。」
「ちょっ・・・何言ってんだよっ!」
「オレもおまえらみたいに、“そんなこと”したくなっちまったって言ってるだけだけど?」
席を立つ司が、嫌な笑みを浮かべたまま蒼空を見る。
「・・・っ、じゃあさっさと帰れよっ!バカツカっ!」
蒼空はさらに顔を赤くして、部屋を出ていく司に言った。・・・もちろん、冗談半分だか。
「ははっ、じゃあまたな。」
そうして・・・今度こそ本当に、二人きりになった。
「まったくもう。なんでああいうからかい方するかなぁ、あいつは。」
今度は同じ事をして仕返ししてやろうと、蒼空は決意した。
「―――蒼空。」
先ほどと同じように返事をしようと、彩華の方を振り返る・・・。
「何だ――――。」
それは、柔らかな何かに・・・またさえぎられた。
~fin~
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