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「おはよう、父さん。」
目が覚めた蒼空は学校に行く準備を整えて、リビングルームにいた父に声をかけた。
「おはよう、蒼空。ほら、朝ご飯が出来てるぞ。」
テーブルの上には焼きたてのトーストと目玉焼き、それと牛乳が置いてあった。
「あー。お父さん、今日は朝ご飯手抜きしてるー。」
「昨日は夜遅くまで仕事をしていたんだから、仕方ないだろう?文句を言うんじゃない。」
蒼空は笑みを浮かべながら、イスに腰かけた。
「わかってるよ、そんなこと。早くお母さんの作ったご飯が食べたいなー。」
「母さんの料理は絶品だからなぁ・・・。じゃなくて、早く食べなさい。学校に遅れるぞ。」
父である京哉にそう言われて、蒼空は焼きたてのトーストをほおばった。
本来ならこのキッチンに立つのは母親だった。しかし、持病である心臓病を持つ彼女の体調は不安定で、入退院を何度もくり返していた。ついこの前、心臓の発作を起こしてしまい入院になってしまったため、また男二人の生活がはじまっていた。
「蒼空、今日は学校が終わったら、病院にまっすぐ行きなさい。藤岡先生に診てもらう日だろう?」
「うん、わかってるよ。学校が終わったら、すぐ行くようにする。」
見事に親から遺伝してしまった蒼空は、生まれた時から体が弱くて、母と同じ先生に診てもらっていた。
「ところで、学校の方はどうだ?最近変わった事とかはあったのか?」
「んー。そろそろこの間のテストがかえってくるんじゃないかな?算数がちょっとミスしちゃったかも。」
「ミス?」
牛乳を一口飲みこみ、京哉が聞いてきた。
「一問だけ、計算ミスした気がするんだ。・・・それだけ。」
勉強が好きな方だった蒼空は、とても頭がよかった。そのためテストで0点とか30点とかバカな点数なんてとるわけがなく、それで怒られる事はなかった。だが彼の場合、いつも別の事でよく怒られていた。
「テストはまぁいいとして。クラスの子達と遊ぶなとは言わないが、ほどほどにするんだぞ?」
「・・・はぁい。」
蒼空の体の事を心配してか、学校の送り迎えを毎日のようにしていた。どうしても仕事の都合でいけない時以外は一人で帰らせたりはせず、病院の母親の所に行ってもらったりしていた。
「じゃあ、行ってきます。」
いつものように学校のそばまで送ってもらった蒼空は、元気にそう言った。
「あぁ。無理だけはするなよ。」
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