71人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言って走り去っていく京哉の車を見送り、蒼空は学校に入っていった。
――――。
今日は一時間目から体育の授業だった。体を動かす事も好きだった蒼空は、この授業の時間も、昼休みの時間にクラスの子と遊ぶのも、楽しくて仕方なかった。けれど・・・そんな彼の気持ちとは裏腹に、彼の体はついていけなかった。
「蒼空君、頼んだ。」
パスを受けた蒼空は、サッカーボールをけりながら相手のゴールの方へ走った。行く先にいた味方に向かって、自分もパスを出す。そのボールを追いかけて、みんなが動いていく。
「・・・っ・・。」
しかし蒼空は、すぐにその場を動けなかった。いつも注意されているし、自分でもわかってはいるのに、楽しくてつい忘れてしまう・・・体のこと。
「・・・・ハアッ、ハアッ。」
息切れを起こして動けなくなるのはいつもの事で、大した問題ではないが、時々息が出来なくなるほどの呼吸困難になる事もあるので、それだけは注意しなければならなかった。
「蒼空君、大丈夫かい!?」
審判をしていた先生が蒼空に気づいて、叫ぶ。
「・・・・っ、大丈夫です!」
すぐに落ち着いたので蒼空はそう言い返して、みんなの所へ戻っていった。 こうして頻繁に具合が悪くなってしまうこんな体でも、蒼空は毎日が楽しかった。こんな幸せな毎日がいつまでも続くだろうと・・・彼は思っていた。
一日の授業が終わり、蒼空はすぐに帰る支度をして学校を出た。昇降口を出た先がグラウンドになっていて、校門がその先にあるため、グラウンドの真ん中を通って行かなければならなかった。
「おぉーい、蒼空君!ドッチボールやろうよ!」
ふとそう話しかけられてそちらを見ると、クラスの子達の何人かが集まっていた。蒼空もついついまざりたくなったが、今日は病院に行かなければならないため、ウズウズする気持ちをなんとか抑え込む。
「んー、そうしたいとこだけど、今日は用事があるからごめんね。」
「そっかー。じゃあまたねー。」
クラスの子達と別れ、蒼空は病院の方へと歩きだした。家からは病院も学校も少し遠いけど、学校からなら病院は意外と近くにあった。街にある大きな商店街の近くにあり、10分くらいの距離だった。
最初のコメントを投稿しよう!