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「蒼空、今日は休んだ方がいいんじゃないか?朝から少し熱っぽいようだし・・・。」
「これくらい大丈夫だよ、お父さん。」
京哉は車から降りる息子に、そう声をかける。
学校が楽しいと思ってくれるのはそれはいい事ではあったが、最近の蒼空は少し心配な所があった。あまり激しい運動はしないようにといつも注意しているのに、学校から話を聞くと『遊んでいたら具合が悪くなり、保健室で休んでいる』という事ばかりで、それが少し気がかりだった。
車から降りた蒼空は、歩いて登校してくる他の子達を見つめた。友達と歩いて登校するというそれは、今の彼にとって一番してみたい事。でも蒼空にはそういう友達はまだいなかった。クラスの子達とはよく話すし遊ぶけど、それは学校でだけの話。学校でだけじゃなく、いつも一緒にいてくれるような友達が・・・蒼空は欲しかった。
「・・・・蒼空?」
しばらくボーッとどこかを見ていた蒼空を気にして、京哉が声をかけてきた。
「・・・じ、じゃあ行ってきます!」
我に返った蒼空は、慌てて学校の中へと走っていった。
朝から微熱があったせいか、体が思うように動かなくて、結局午前中にあった体育の授業は見学になってしまった。昼休みになる頃には少し具合も良くなり、蒼空はクラスの子達とグラウンドに遊びに出ていた。
「よっし、捕まえた!」
一人の子がみんなを追いかけまわして捕まえる・・・つまり鬼ゴッコ。何人か捕まえた鬼役の子は、次の標的を蒼空にむける。
捕まらないように頑張って逃げる蒼空だったが、その子の足は速くて、すぐに追いつかれてしまった。
「捕まえ・・・たっ!」
鬼役のその子は蒼空の肩にタッチし、軽く彼の背中を押した。
しかし、押された蒼空はバランスを崩し、その場に崩れ落ちた。
「・・・蒼空、君?」
座り込んだ事を変に思い、おそるおそる蒼空の顔を覗き込んできた。
「・・・・ハアッ、ハアッ。」
蒼空は胸元をおさえて、苦しそうに顔を歪めていた。
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