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「……だったよね?あの時叫んだ下の名前。」
加村さんは、何でもない風にふふっと、笑った。
「あ、あのっ!?はい……。」
さっきまで、大声を出せていたのに、急に尻すぼみな声になってしまった。
ドキドキ。
ドキドキ。
名前を呼ばれただけで、鼓動が速くなる。
電話しているだけで、とても嬉しい。
これを、「恋」と言わずに、何と呼ぶのか、私には分からない。
だけど。
加村さんの「恋」のベクトルは、別の方へと向いていたのだ。
あたしが彼を知らないときから、ずっと「あの人」へと。
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