7.これが、俺。

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……この感情は、「恋」なのだ。 俺は、ずっとそう思ってきた。 二年半程前に知り合った、新橋亜犁安先生。 彼女は、臨床心理士という職に就いている。 周りの人や物がセピア色だった、俺の苦い記憶。 一生忘れられない、今でも思い返すと辛くなるあの時のこと。 そこに、色を加えてくれたのが、亜犁安さんだった。 ……ちょっとクサい言い方だけど、それは真実。 初めて会ったのは春。 「臨床心理士は、カウンセラーさんのことよ。」 そう、母親に勧められて対面したのが、亜犁安さん。 俺は、その「カウンセラーさん」から、どんな嫌な記憶を引き出されるのか、どんな心理検査で心の中を覗かれるのか、すごく心配だった。 けれど、実際に話してみた白衣を着た彼女は、全然イメージと違って。 「今日は、ぽかぽかしていて気持ち良いわねぇ。」 「今日は、家で何をしてたの?読書?良いわね。先生も本は好きよ。」 そんな、正直どうでもいい話ばっかりで。 でも、内心ホッとしていた。 ーこの人は、俺を傷つけたりしないー そう、段々と思えてきたからだ。 けれど、1年くらいカウンセリングを受け続けていた頃だろうか。 俺は、亜犁安さんの一言で、酷く傷ついてしまった。
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