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「ぁああ?いっちょ前に武士気取りか、もっぺん言ってみろ!」
店先で言い合っていたにもかかわらず、店番は鬼灯の胸倉を掴み上げた。すかさず俺も助けようとしたのだが、敢え無く吹っ飛ばされてしまった。
「おめぇは邪魔だ!」
「うわあっ」
俺達の声を聞き付け、辺りには徐々に人だかりができていた。
「いっ…てぇぇ…」
入口の角で膝から下を思い切り叩きつけた俺は立つことが出来ず、鬼灯も鬼灯で相手の挑発に乗ってしまい、そこからがいよいよ大変だった。
「クソだと言ったんだ!まだ分からないなら何べんでも言ってやるぞ!」
「何だとぉぉ!? 力で俺に敵うとでも思ってんのか!クソはてめぇだ、こん餓鬼!」
「っ!!」
店番が鬼灯の首を絞めたということは辛うじて確認したが、俺は目線だけ上を見ながら叫ぶことしか出来なかった。
「おい……っ!そいつを放せ!」
「はっは、なるほど、名無しだから名前を呼ぶことも出来ねぇか。そいつとはどいつのことかな!」
意地の悪い男である。空気を吸おうと必死にもがく鬼灯を前にしながら、何も言い返せない自分を悔しくも思った。
しかしこんな状況になってもまだ、鬼灯は反撃した。
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