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そのまま一心不乱に目標へと進む彼の意識を戻したのは、強い衝撃だった。激突した覚えもないのに衝撃を受けたその理由を察した少年は顔を顰める。機体の右足にロボットの椀部に装着された鍵爪のようなものが突き刺さっていた。彼の足にぶら下がるような格好となったその機械の装甲の隙間から発せられる目のような赤い光と視線がぶつかる。
次の瞬間、背中に強烈な熱線を感じた少年は、再び頭上へと視線を向けなおした。彼がよそ見をしている間に、わずかに上昇する角度がずれ、岩の壁に背中をこすり付けていたのだ。
慌てて左足で壁を蹴って軌道修正すると、ついでに右足を意図的にこすり付けた。彼の右足とそこにぶら下がっていたロボットが激しい火花を散らす。――そして、鋭く尖った岩壁を抉り取ったと同時に、ゴギっという鈍い音と共に彼の体が軽くなった。
「ぐあああああああっ」
絶叫した少年は、それでも速度を一切落とすことなく、むしろ前よりも加速していた。
彼の右足にぶら下がる敵の排除だけでなく、機体の右足もろともごっそり持っていかれたのだ。切断面からは無数の火花が散っていた。
彼のわずか下降で並走していた二体のロボットは、上から落ちてきた仲間には目もくれず、いまだ標的である少年の後を追いかけてきている。構わず上層に見える光の環の中へと飛び込んでいった。
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