グラウンド・エデン

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 床掃除を終えたレンに、正午を知らせるサイレンが聴こえてきた。  食堂へと向かう長い廊下。床は動く歩道になっており、その上に足を乗せれば勝手に移動することができる。彼は手すりに体重を乗せると、窓から覗く外の風景をぼんやりと眺めた。  そこに映っていたのは青空――ではなく、青色のスクリーンに疑似的に映し出された太陽が照らされていた。いつ見ても雲一つない快晴の空。この世界には天気と言う概念がない。  それもそのはず、ここは地下七十二階層にある巨大なフロアなのである。  一つのフロアに街一つ分が丸々再現されたこの空間は、軍事訓練学校の為に用意されたものだ。その学校に通うレンは、現在レベル二の訓練生である。  この学校では一般的な学年と言う概念はない。生徒達は年齢には関係なく、その成績でレベル一からレベル五までの五段階に分けられている。  また、それとは別に指揮官候補生と言う特待生枠が存在する。これに選ばれた者は、厳しい訓練の代わりに軍事を勉強させられる。生き死に関わらない安全な仕事ということで人気も高く、それ自体が一種のステータスになっていた。  もちろんレンにはそんなチャンスに恵まれることもなく、一般の訓練生という扱いで入学していた。学年の代わりに存在するレベルであるが、レベル一からレベル二の活動内容は、主に雑務や訓練が殆どで実践に参加する機会はほとんどない。実践に参加できるのはレベル三からである。隊長クラスがレベル四、そして最高レベルのレベル五に至ってはまだたったの六人しか存在しない最強クラスの傭兵である。  先程から実践だ、訓練だと物騒な話をしているが、彼らがいったい何と戦っているのか……
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