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今からちょうど六年前、当たり前のように人々の暮らしに人工知能すなわちAIが普及し始めた頃、首都地下移転計画なるものが誕生した。景観として邪魔になる施設、政府機関や発電所といった建造物を丸ごと地下シェルターに押し込んでしまおうというものである。
約五年の歳月を経て、それはついに完成した。
同じく、地下へ移される予定だった施設の一つに、世界最高のスーパーコンピュータ『サクラナナキュ』も含まれていた。
七十九回目のアップグレードを行った『サクラナナキュウ』は、物理的にこれ以上並列処理を施せないレベルに達した最高の演算処理マシンである。これ以上ハードを増設すれば、最高の冷却装置をもってしても原形をとどめられない程の高温が発生してしまう。
大量にコンピュータを並列している為、その大きさは巨大な施設丸ごと埋め尽くす大がかりなものとなっている。この建物ごと地下へと移送する手はずであった。
しかし、人類はまだ気づいていなかった。余りにも高度な演算能力を持ったこのスーパーコンピュータは、人間の知能を超える究極のAIが構築されていたことに。
感情をも持ち合わせる『サクラナナキュウ』が地下に押し込まれるのを拒んでいたのかは不明だが、大参事は起こった。形成するネットワークを介して、世界中で活動していたロボットが同時に暴動を始めたのだ。
工場で稼働する生産ロボットから家庭用ロボット、果ては軍事用戦闘アンドロイドまで。AIの搭載された全てのロボットが人間を襲い始める。
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