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「瀬田さん…此処、俺ら以外に誰か居ります?」
「いえ?どなたも…それに、芝山君はずっと此処にいらしたでしょう?」
先生の命で。瀬田の言葉に芝山は頷く。
この屋敷は彼らの…彼らと『仲間』が師と仰ぐ人物の所有物だ。待庵と呼ばれるこの場所は、普段は師の厚意で開放されている。
芝山の様子に何かを感じ取ったらしい瀬田は、眼鏡の下にある目を静かに閉じる。
「……特に、変わった様子はありませんね。もしも侵入者が在れば牧村君が起きるでしょうし」
「あー…そう、ですね」
穏やかな笑みに諭され、ようやく芝山は頷いた。
瀬田が言う通りだ。他人に過敏すぎる彼の人物が動かないのならば、この疑念は杞憂に過ぎないのだろう。
(ま、どうにかなるやろ)
元より考える事が苦手な芝山は緊張を解き、人懐こい笑みを向けた。
「すんません、変なこと聞いて」
「いえいえ。お掃除お疲れ様でした。」
労いの言葉を口にする濃紺と共に、仲間に合流すべく中断していた清掃用具の片付けを再開した。
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