●縁側にて●

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「牧村さーん。ちょい起きてくれません?」 ばさっと音を立てて、黒を剥ぎ取る。 「………」 途端、現れるのは鮮やかな橙の髪。光に透け揺れる髪は癖が強く、風に柔らかく揺れている。 昼寝から無理矢理に引っ張り出された橙は、眩しそうに閉じたままの目を擦っている。 「………」 やがて薄らと開かれた目は、不機嫌を全面に押し出していた。昼寝を邪魔された苛立ちを視線に込めて、目の前に在る芝山を睨み付けていた。 「…えー…」 「牧村君、すいません。…此方に私達以外の『誰か』がいらっしゃいませんでしたか?」 見兼ねた瀬田が横から話し掛けると、牧村は其方を一瞥し僅かに首を振った。 芝山に手を向ける。剥ぎ取った黒…彼の羽織を返せという事らしい。 「其方も何かあったようですね」 この集団に在って一回り小さい体躯を丸めて、再び黒に包まる牧村。その姿を全員で見届けた後、高山が静かに問う。 瀬田と芝山、同じ事象に遭遇した高山と古田。四人は顔を見合わせ、陽の光の中立ち消えた甘い香りに眉を顰めた。
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