1章

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職員室にも人の気配はなかった。 唯一人がいた証拠のように、冷めて伸びに伸びたカップ麺が給湯室に置かれている。 テレビではドラマの再放送や天気予報が流れている。 「…昨日もこの日と同じ天気だった。つまりこの日は8月31日を擬似的に再現した可能性が高いってこと。」 奥山は淡々と言った。 8月32日を「今日」と言わず「この日」と言ったのはこの日を今日として認めてないからだろうか。 「つまり明日もあのカップ麺があそこにあると。」 「多分ね。それと…」 奥山はカバンからカメラを取り出した。 「阿壹県の外には行けないみたい。」 その写真で県境はドス黒い壁のような物に覆われていた。 「…これ、どこで撮ったんだ…?」 「私の家の裏。県境なの。」 「なるほど…」 「モンスターにも遭遇したわ。幸いにも、あんなドラゴンみたいな奴はいなかったけどね。」 「……」 この自分と同い年の少女は、しかし、自分より圧倒的に強い。 俺だったらモンスターに怯えて学校に行こうとすら思わなかったろう。 「あと一つわかったこと。それは…」 「…?」 「納岳手市内に、モンスターは入れない。」
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