1268人が本棚に入れています
本棚に追加
職員室にも人の気配はなかった。
唯一人がいた証拠のように、冷めて伸びに伸びたカップ麺が給湯室に置かれている。
テレビではドラマの再放送や天気予報が流れている。
「…昨日もこの日と同じ天気だった。つまりこの日は8月31日を擬似的に再現した可能性が高いってこと。」
奥山は淡々と言った。
8月32日を「今日」と言わず「この日」と言ったのはこの日を今日として認めてないからだろうか。
「つまり明日もあのカップ麺があそこにあると。」
「多分ね。それと…」
奥山はカバンからカメラを取り出した。
「阿壹県の外には行けないみたい。」
その写真で県境はドス黒い壁のような物に覆われていた。
「…これ、どこで撮ったんだ…?」
「私の家の裏。県境なの。」
「なるほど…」
「モンスターにも遭遇したわ。幸いにも、あんなドラゴンみたいな奴はいなかったけどね。」
「……」
この自分と同い年の少女は、しかし、自分より圧倒的に強い。
俺だったらモンスターに怯えて学校に行こうとすら思わなかったろう。
「あと一つわかったこと。それは…」
「…?」
「納岳手市内に、モンスターは入れない。」
最初のコメントを投稿しよう!