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泣き疲れて、気持ちが落ち着き始めた時、俺は教卓に紙が置いてあるのに気づいた。
そこには整った字でこう書かれていた。
「学校内を探索しています。9時には戻ります。」
時計を見ると8時55分だった。
二十分、俺は泣き続けていたことになる。
誰かの足音が近づいてきた。
足音は教室の前で止まり、扉が開いた。
教室に入って来たのは普段あまり交流のない、奥山 空衣那だった。
俺だけでは無い。
奥山は普段誰とも必要以上に喋らなかった。
誰かと馴れ合うのを嫌っているような雰囲気だった。
誰も声をかけられなかった。
「あれ、いたの。」
そんな奥山が俺に声をかけた。
初めて話すのにしては馴れ馴れしく。
知り合いにしてはよそよそしく。
全く表情を変えずに。
「お、おう…」
俺は弱々しく返事をすることしかできなかった。
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