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千本鳥居を抜けた森の奥。
晴れているのに降り始めた雨は、止む気配がなくシトシトと森を濡らしていく。
大きな大きな桜の木の下に雨宿りをしているのか、2つの人影が立っている。
年頃の小袖姿の女と、袴姿の男。
二人とも綺麗な容姿をしていて、桜の木の下に立つ姿が様になっていた。
「晴れているのに降りだした……
気味が悪いな…………本当にこんな森の中なのか?
確かここは―――――」
男が訝しげに女に問いかける。
「そうよ。
辺境の村なの。
神話の森の奥にあるだけあって、変な掟がたくさんあって……
外の人間には知られ無いように閉ざされているけど、この桜が目印だった…
―――――閉ざされてるから、とても堅苦しいところだった気がするけど
晴れ雨は、ここではそう珍しくもないの」
そうして女は桜の木にそっと触れた。
頭上では満開に桜の花が咲き誇り、風が吹くたびにハラハラと花弁を舞わせている。
雨が降っているにも関わらず、その美しさは陰ることもない。
「そんな所に俺みたいな余所者が行っても良いのか?」
風で煽られる髪を押さえながら男が今度は不安げに女に問うた。
「大丈夫よ。
妹がね、今はその村の主みたいなモノなの。
だから誰も何も言わないわ…
それに―――――」
「それに?」
「いえ。
―――妹が、もうすぐ迎えに来てくれるはずだから…」
女が良い終わると同時に、一際強い風が吹き、舞う花弁と、風にあおられる髪で視界が遮られ、男は固く目を閉じた。
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