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「―――――――――――――大丈夫ですか?」
静かな声だった。
その声とともに風は少しずつ弱まり、やがて元の静寂を取り戻して行く。
顔を守る様に翳していた手をどけて、そっと瞼を持ち上げれば、見知らぬ足の指先が見えた。
徐々に視界を上げて行くと、顔半分を狐の面で隠した、声から察するに女が立っていて、その後ろには完全に狐の面で顔を隠した白髪の人物が控えている。
完全に顔を隠しているので、性別も年齢も読み取ることが出来ない。
その二人の奇妙な出で立ちに、男は驚いて数歩後ずさった。
「お久しぶりにございます。姫神子」
「―――――――――――…おかえりなさいませ、姉上」
そんな男の様子に見向きもせずに、男の連れの女と、狐面の女は親しそうに、それでいてどこか余所余所しく言葉を返している。
「望月。さっき話していた妹の朔月……て、何?
呆けてどうしたの?」
女が前に出て、呆けた様に静止した男の子の前で手を上下させる。
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