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望月と呼ばれた男は、誤魔化す様に視線を一度はずし、再び目の前の異様な二人組に戻した。
「あぁ、きっと私達の恰好に驚かれたのでしょう…」
気を悪くするでもなく狐面の朔月と呼ばれた女が口元をほころばせる。
「驚かせてごめんなさい…。
この格好は奇妙でございましょう?
ごめんなさい…村の決まりで―――」
「言ったでしょう?
色々と堅苦しいって…」
「…あ……ぁ」
「村ではおめでたい事はお祭りでございます。
色々煩わしい儀式が続いて堅苦しい思いをさせてしまうかとは思いますが…
楽しんで行って下さいませ。
――――――――申し遅れました、わたくし『朔月』と申します」
朔月が名乗ると同時に右手を差し出した。
つられて目を女の手に下ろすと、青いほどに白く細すぎるばかりに、女のくせに骨ばった手が見える。
「………『望月』だ。―――世話になる」
そう言って男は朔月の手にそっと手を合わせた。
そうしなければ、少し力を込めただけで折れてしまいそうなほど、その手の作りは弱弱しい。
「…―――――――――――――――――・・・っ」
朔月の手に触れた瞬間に望月は激しい頭痛に襲われ、思わずその手を離そうと身を引く。
が、触れた彼女の手はその細さからは考えられない程の力で握られ、引いた手は離れず、更に引き寄せられた。
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