神話の森

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「望月!!」 引き寄せられる手に、頭痛は更に激しさを増し、耳鳴りと眩暈と吐き気が襲う中、僅かに見える苦しそうに微笑んだ朔月の口元を捉えたのを最後に、望月の意識は糸を切ったかのように暗闇へと引き込まれた。 力無く崩れた望月の身体を支えるでもなく、それまで強く握っていた彼の手を、重力に任せるまま、呆気なく手放し、朔月は力が抜けた様に足を縺れさせて後ずさる。 足がもつれて崩れかけた体勢を、後ろに控えていてた狐面の男がそっと支えて整えさせた。 「朔月」 「大丈夫」 触れれは分かる程に小さく震える肩を、必死に整えようと朔月は数回深く息をついて、倒れた望月に駆け寄った姉に冷たい視線を向ける。 「少し乱暴でしたでしょうか?」 そう言って、開いた自分の手に朔月は視線を落とす。 骨ばった手が小刻みに震え、それを隠す様に朔月は何度か手を開閉させる。 「まぁ、平気ですよ。―――大丈夫」 狐面の男は朔月の手を両手でそっと包み、落ち着かせるように一度強く握った。 そうされて、納得したように朔月は一度頷き、姉の方へと再び視線を落とす。
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