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夢を見ていた。
幼いころからずっとずっと繰り返し見続けている白い夢。
建物も、着ているものも、全てが真っ白。
周りの皆は自分の事を『若宮』と呼び、ある者は遠巻きに。
ある者は腫れ者に触れる様に。
そうな風に扱われていた。
宮殿の様な所に住み、周りは大人に囲まれ、互いが顔色を窺い暮らす日々。
幼い自分の精神は不安定にむしばまれていった。
毎日毎日大人の中で子供であるのに大人の対応を求められる日々に、色が無くなっていく中、それは現れた。
同じ宮殿に住む同じ一族の姫に御子が生まれたと言う知らせが耳に入り、宮殿の中も心なしか浮足立っているように感じた。
その御子は一族にとって何やら特別な存在らしく、それは皆の感情の高揚が物語っている。
浮足立っている大人達。
しかしそこに自分が通りかかると気まずそうに居住まいを正し傅く。
自分が通り過ぎると再開される御子に関する会話。
気にならない理由は無かった。
しかし大人の顔色しか窺えない自分には、周りの大人の話に加わることも、自分から切り出す事も出来ない。
渦中の人物に出会ったのは、それから随分と時間がたった後だった。
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