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「あぁ、目が覚めましたか?」
開いた視界に写ったのは、見慣れない天井。
ぼんやりと天井を見つめる男に、淡々とした声が降り、男は視界を声の方へ動かす。
見えたのは狐のお面をした白髪の男。
先ほど朔月と言う女の後方に控えていた人物と背格好からして同一人物だろう。
白髪を見て老人かと思っていたが、後ろで括られ座る畳にまで伸びて扇状広がったそれには艶があり、見えている肌にも皺が見られない。
何より凛と伸びた背と、声に、若者だと望月は認識する。
「長旅でお疲れでしたでしょう?
いきなり倒れられたので、わたくしが此方へお連れさせていただきました
雨で、体を冷やされてはおりませぬか?」
そう言われ、記憶が途切れるまでの事を思い返そうとするが、靄が掛かった様に定まらない。
倒れて混乱しているのか、何度か試して無理な事を悟ると、諦めてゆっくりと身体を起こした。
「迷惑を掛けてしまったようで…申し訳ない」
なんにせよ倒れた大の男を運ぶのは大変だっただろうと、望月は素直に頭を下げた。
「否、朔月の命でございますから。
望月殿は御気になさらず」
淡々とした口調のせいか、怒っているわけではないと思うが、突き放す様な言葉に会話を続けることが難しい。
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