第一夜

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「名前を聞いても?」 流れる空気に居たたまれず話題を見つけては口を開く。 「-------。…繊月と申します」 聞かれた事には答えるが、己からは会話を広げようとしない繊月に再び部屋は静寂に包まれてしまう。 「貴殿も月の名前なのだな…」 ふと思った事が口をついて出た瞬間、繊月が身じろいだのを感じた。 狐面のせいで表情は窺えなかったが、動揺したように感じ望月はチラリ繊月を見る、 「どうか―――」 「名付け親が、殊更天文学が好きな御方でございましたので、 私と朔月の名にそれを与えて下さったのです」 淡々と落ち着いた口調ではあるが、望月の言葉を遮る様に発せられたそれは、焦っている様にも思える。 「そう、なのか」 「望月という名もも月のお名前でありますなぁ」 そこでゆったりとした女の声が間に入り込む。 「お伺いした時に、驚きましたもの」 開いた障子から狐面で顔を半分隠した女が姿を現し、衣擦れの音と共に部屋に入ってきた。
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