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白い白い社の中をしずしずと進む。
袿の裾を引き摺り、紅く浮き立つ鳥居をくぐり、社の中へ足を踏み入れると、その中で佇む女が見えた。
「有明様…?
望月様には上手く説明をいたしましたが」
「そう」
佇む女に声を掛けると、そっけない静かな声が帰ってくる。
「良いのでしょうか?」
真白の袿姿の有明の肩が、朔月の声にピクリと反応し、ギロリ視線で睨まれた。
「どういう意味?」
低い、絞り出すような声が有明から発せられ、静かに振り向いた顔は憎しみに歪んでいる。
「どうしてここに戻られました……。
あの場所で、二人過ごしておられればよろしかったものを…」
「………っっ」
「望月様の記憶を戻してしまっても良いのですか……?
私はそうお伺いしておるのです」
有明の視線を受け流し言葉を続ける朔月の表情はいたって無表情。
それが更に有明の怒りに拍車を掛けて行く。
「記憶が戻ったらどうだと言うの…?」
変わらず絞り出す様に出す低い声が、有明の喉を伝って、朔月の耳へと届く。
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